2026-7-23 擎驛能源、使用済み太陽光パネルの循環型リサイクルモデルを構築 ― 高効率リサイクルでサーキュラーエコノミーの新たな価値を創出
2026-07-24
出典:『財訊』第768号
太陽光パネルの大量廃棄時代へ
数千億円規模のリサイクル市場が本格始動
擎驛能源、革新的技術で使用済み太陽光パネルを新たな資源へ
世界的な脱炭素化と再生可能エネルギーの普及を背景に、台湾では太陽光発電設備の導入が急速に進んでいる。設備容量はすでに14GWに達し、政府が掲げる20GWの目標に向けてさらなる拡大が続いている。一方で、今後避けて通れない課題として、耐用年数を迎えた太陽光パネルの大量廃棄と、その適切なリサイクル体制の構築が注目されている。
台湾では2010年頃から本格的に太陽光パネルの設置が始まり、中華経済研究院グリーンエコノミー研究センター主任の林俊旭氏は、「2030年前後には大量の使用済み太陽光パネルが発生し、重大な廃棄物問題となる可能性が高い」と指摘している。その時期はすでに目前に迫っており、さらに昨年発生した台風ダナスでは約10万枚もの太陽光パネルが損傷し、大量の廃棄パネルを迅速かつ適切に処理できるリサイクル体制の重要性が改めて浮き彫りとなった。
こうした課題に対応するため、銓泰環能科技(Promore Environment & Energy Co., Ltd.)、成信実業(Transcene Corporation)、優良控股( Yew Liang Holding Co., Ltd.)の3社は共同出資により擎驛能源を設立した。サーキュラーエコノミーの理念のもと、使用済み太陽光パネルを新たな資源として循環利用するリサイクルシステムの構築を目指している。
創業約20年の実績を持つ銓泰環能科技は、太陽光発電EPC(設計・調達・施工)事業を展開してきた企業であり、同社および擎驛能源の董事長である蘇玉姿氏は、「太陽光発電システムの建設だけでなく、使用済みパネルの回収から再資源化までを一貫して担う循環型モデルを構築し、すべての資源価値を最大限に引き出したい」と語る。
回収効率がリサイクル事業の成否を左右する
太陽光パネルは約70%がガラスで構成され、そのほかアルミフレームが15〜20%、EVA封止材とバックシートが6〜7%、シリコンセルと金属配線が約4%、さらにPP樹脂や高品質銅線で構成されるジャンクションボックスが約2%を占めている。
現在、多くのリサイクル事業者では、まずアルミフレームを手作業で取り外し、その後ガラスを破砕して建築資材などへ再利用している。一方、銀や銅、シリコンは含有量こそ少ないものの希少資源であり、高い回収価値を持つ。
しかし、成信実業(Transcene Corporation)の総経理である謝雅敏氏は、現在のリサイクルにおける最大の課題は「処理効率」であると指摘する。アルミフレームを人手で取り外す従来方式では処理速度が遅く、大量の使用済みパネルが発生した際には処理能力が追いつかず、一時保管を余儀なくされるケースも少なくない。
さらに、回収したガラスの活用方法にも課題が残る。林俊旭氏は、ガラスを再びガラス製品へ利用する場合には混合比率に制限があると説明する。また、国立成功大学資源工程学科の陳偉聖教授は、「太陽光パネル用ガラスは非常に硬質であり、建設資材として利用するためには鋭利な角を研磨する必要がある。その工程では多くのエネルギーを消費し、コスト増加だけでなくCO₂排出量の増加にもつながる」と指摘している。
独自技術で実現する高効率リサイクル
こうした課題を解決するため、擎驛能源は独自に開発した高効率リサイクルシステムを導入している。同社の設備は「フレーム分離」「ガラス分離」「バックシート選別」の3工程から構成されている。
第一工程では、独自開発の装置によってアルミフレームとジャンクションボックスを同時に取り外し、1分間に1枚という高い処理能力を実現している。さらに、ガラスを破損させずに分離できるため、その後の再利用価値を維持できることも大きな特長である。
第二工程では、フレームを取り外したガラスを専用装置へ送り、加熱ブレードによってEVA封止材を軟化・分離する。約1分でガラスとバックシートを完全に分離できるため、粉じんや排ガスの発生を最小限に抑えながら高品質なガラス回収を可能としている。破損したパネルについても専用設備を用い、大部分のガラスを効率よく回収できる。
第三工程では、太陽電池セルが付着したバックシートを粉砕・均一化した後、材料ごとの比重や導電性の違いを利用した選別技術により、シリコン粉末、銅線、プラスチックなどの資源を高精度で回収する。
これらの工程は高度に自動化されており、高い回収率と大量処理能力を両立している点が大きな強みとなっている。
リサイクル率95%超、ガラスの高付加価値利用を実現
擎驛能源のリサイクル技術により、資源回収率は95%以上を達成している。その中でも最大の特長は、ガラスを破損させることなく回収し、本来の価値を維持したまま再利用できる点にある。
成信実業(Transcene Corporation)の総経理である謝雅敏氏は、「太陽光パネルから回収した厚さ約3mmのガラスは、破損していないため2枚を貼り合わせることで6mm厚の強化ガラスとして再利用することが可能です」と説明する。
再生された強化ガラスは、温室や採光屋根、日よけパネルなどの建築用途に利用できるだけでなく、新品のフロートガラスを使用する場合と比較してコストを削減でき、製造工程に伴うCO₂排出量も大幅に低減できる。
現在回収されるガラスは旧世代の太陽光パネル向け規格であるため、現段階では新たな太陽光パネルへの再利用には至っていない。しかし、陳偉聖教授は「適切な選別技術を確立し、太陽光パネルに必要な92%以上の透過率を満たすことができれば、将来的には再び太陽光パネル用ガラスとして利用できる可能性があり、さらに高い経済価値を創出できる」と期待を寄せている。
循環型社会の実現に向けて
現在、擎驛能源ではリサイクル設備の設置を順次完了し、試運転開始に向けた認可取得を進めている。稼働後の月間処理能力は約600トンを見込んでおり、台湾における太陽光パネルリサイクル産業の中核を担う存在として期待されている。
今後、世界的な再生可能エネルギー市場の拡大とともに、使用済み太陽光パネルの適切な回収・再資源化はますます重要性を増していく。さらに、リサイクル工程全体のトレーサビリティを確立し、資源循環を可視化することで、環境負荷低減やサーキュラーエコノミーを重視する半導体産業をはじめとする企業に対して、新たな付加価値を提供することが期待されている。
擎驛能源は、革新的なリサイクル技術を通じて、使用済み太陽光パネルを「廃棄物」ではなく「新たな資源」へと生まれ変わらせ、持続可能な循環型社会の実現に向けて歩みを進めている。

図1: 擎驛能源の蘇玉姿董事長は、太陽光発電・蓄電システム事業に加え、使用済み太陽光パネルのリサイクル
事業へと事業領域を拡大している。
撮影:陳俊松

図2:擎驛能源の設備は、使用済み太陽光パネルを高速で処理するとともに、高いリサイクル率を実現している。
撮影:陳俊松